給料日。明細を見て、ため息をついたことはありませんか?

仕事は嫌いじゃない。むしろ好きなんだ。でも……この給料で、この先やっていけるのかな

その気持ち、痛いほど分かるよ。僕も20年この仕事をしてきて、同じため息を何度もついてきたから
私は整備士として20年以上、ディーラーと民間整備工場の両方で働いてきました。
この記事では、統計データと、私自身・同僚たちのリアルな実例をもとに、次の3つをお伝えします。
- 整備士の給料の「本当のところ」(統計と手取り額)
- なぜ整備士の給料は上がりにくいのか(構造の話)
- 給料を上げるための4つのルート(あなたに合うものを選べます)
読み終わる頃には、自分の現在地と、明日からの一歩が見えているはずです。
結論:「整備士の給料は安い」は半分本当です
先に結論からお伝えします。
統計を見ると、整備士の平均年収は世間の平均と比べて高いとは言えません。これは事実です。
ただ、20年現場にいる立場から言えるのは、「同じ整備士でも、働く場所と選び方で収入は大きく変わる」ということです。
実際、私はディーラー時代に年収600万円以上をいただいていた時期がありますし、民間整備工場に転職した今は、残業ほぼゼロで手取り30万円をいただいています。
「安い」と嘆いて終わるか、「安いまま終わらせない」ために動くか。この記事は、後者のための記事です。
整備士の給料のリアル【統計と手取り】
平均年収のデータ
令和6年度の実態調査によると、整備士の平均年収は次のとおりです。
| 民間整備士 | ディーラー整備士 | |
|---|---|---|
| 平均年収 | 425.8万円 | 509.4万円 |
出典:一般社団法人 日本自動車整備振興会連合会「令和6年度 自動車特定整備業実態調査」
ちなみに、ディーラー整備士の平均年収が500万円を超えたのは、この調査で初めてのことです。業界全体として、少しずつ待遇は上がってきています。
手取りに直すといくら?
年収だけ見てもピンと来ないので、手取りに換算してみます(独身・扶養なし、社会保険料+税金で約2割控除と仮定した概算です)。
| 民間整備士 | ディーラー整備士 | |
|---|---|---|
| 月給(額面) | 約29.5万円 | 約35.4万円 |
| 手取り月給 | 約23.6万円 | 約28.3万円 |
| ボーナス手取り(年) | 約56.8万円 | 約67.9万円 |
※ボーナスは民間2ヶ月分・ディーラー3ヶ月分と仮定した概算です。
あなたの現在地を確かめる3つの質問
自分の状況を、3つの質問で確かめてみてください。
- 年収は、上の平均と比べてどうですか?
- その年収、残業何時間で成り立っていますか?(ここが落とし穴です。あとで詳しく話します)
- 資格手当・家族手当などは、きちんと支給されていますか?
平均より下だった方も、落ち込まないでください。次の章でお話しするとおり、原因はあなたの腕ではなく「構造」にあることが多いからです。
なぜ整備士の給料は上がりにくいのか【構造の話】
給料の原資は「工賃」。そして工賃には上限がある
私たち整備士の給料の原資は、お客様からいただく工賃です。
工賃は「1時間あたりの単価 × 作業時間」で決まります。そして、ここに構造的な限界があります。
- 1日に働ける時間は決まっている → 1人の整備士が稼げる工賃(獲得工賃)には物理的な上限がある
- 時間あたりの単価を決めるのは会社 → 自分の努力では上げられない
- 売上のうち人件費に回せる割合も、経営上ほぼ決まっている
つまり、どれだけ腕を磨いて作業が速くなっても、給料が青天井に増える仕組みには、そもそもなっていないのです。
だから「努力不足」ではありません
「自分の頑張りが足りないから給料が安いんだ」と思っている方にこそ、この構造を知ってほしいと思います。
構造を知ると、戦い方が変わります。選択肢は大きく4つ。構造の中で評価を上げるか、構造ごと変えるか、構造の測り方を変えるか、構造の外で備えるか——次の章で順番に説明します。
給料を上げる4つのルート
ルート1:今の職場で評価を上げる
① 資格・検定を取る
代表格は自動車検査員です。ただし、手当は会社によって大きく違います。
実例を挙げると、私が勤めていたディーラーでは検査員手当はありませんでした。今勤めている民間整備工場では月2万円支給されています。同じ資格でも、年間にすると24万円の差です。
社内検定も効きます。私はトヨタの社内検定で最上級の資格を取得しましたが、これは昇給・昇格の評価に確実につながりました。
② 「自分という商品」をアピールする
そして、もうひとつ。正直に書きます。
評価するのは上司、つまり人間です。
かつての私は「ゴマすりで評価が上がるなんて」と冷めた目で見ていました。でも、違ったんです。どれだけ腕があっても、伝わらなければ、上司は評価のしようがない。
自分という商品を、ちゃんとアピールすること。具体的には、周りが困っている仕事を引き受ける、職場への貢献を行動で見せる——ひと言でいえば他者貢献です。
実際、私の周りで給料が高い同僚には共通点がありました。
- 獲得工賃が多い(特に車検整備をしっかり回せる人)
- 上司との関係性が良好
- 技術・診断・接客の総合力が高い
腕は前提。そのうえで「伝える・貢献する」ができる人が評価されています。
▶ このルートが向いている人:今の職場の人間関係が悪くない人/評価制度や手当の仕組みがある会社にいる人
ルート2:職場を変える
検査員手当の例を思い出してください。同じ資格・同じ腕でも、会社が変われば0円が月2万円になる。あなたの価値は、職場によって値段が変わるのです。
私自身、ディーラーから民間整備工場へ転職しました。額面の年収は下がりましたが、得たものは大きかった(詳しくは次のルート3で)。
もうひとつ、印象的な友人の例があります。彼は車の整備から機械系の整備へ転職しました。前の職場では評価されるよう努力を重ねても報われませんでしたが、整備士に特化した転職エージェントを使って転職し、初年度から大幅な年収アップを実現しています。
今すぐ転職する気がなくても、自分の市場価値を知っておくことは武器になります。
▶ 詳しくは:整備士が転職を成功させる完全ガイド【転職先・手順・失敗しない方法を全解説】
▶ このルートが向いている人:評価制度がない・関係性で行き詰まっている・手当が出ない職場にいる人
ルート3:「時間単価」で考え直す
これは、20年働いてたどり着いた私の結論です。
年収の額面だけで職場を選ぶと、失敗します。
私の実例で計算してみます(1日8時間勤務として概算)。
| ディーラー時代 | 現在(民間) | |
|---|---|---|
| 年収(額面) | 600万円以上 | 約500万円 |
| 月の休日 | 約6日(月曜定休+フリー公休) | 約7.5日(日曜・祝日・第二土曜+フリー公休) |
| 月の労働時間 | 約212時間(残業20時間含む) | 約184時間(残業なし・8時〜17時) |
| 時間単価 | 約2,360円 | 約2,260円 |
転職して額面は100万円下がりました。でも時間単価を計算すると、ほぼ互角なんです。
つまり、あの100万円の差は「能力の差」ではなく、「差し出した時間の量の差」でした。私は転職で、年間336時間——8時間勤務に換算して約42日分——の自由な時間を買い戻したことになります。
その時間で家族と過ごせて、体も心も消耗しない。毎日17時に帰れる生活は、数字以上の価値でした。
高年収にも裏があります。富裕層向け店舗で働く友人は年収700万円以上ですが、定時退社はほぼなく、毎日2〜3時間の残業だそうです。それが悪いのではなく、「何を差し出して、その年収なのか」を知ったうえで選ぶべき、ということです。
あなたも一度、自分の年収を「実際の総労働時間」で割ってみてください。額面の大小と、時間単価の大小は、必ずしも一致しません。
▶ このルートが向いている人:家族との時間や体力に限界を感じ始めている人
ルート4:増えない分は「守り」で手元に残す
ここまでの3ルートは「収入を増やす」話でした。最後は逆方向、「出ていくお金を減らし、手元に残す」ルートです。
構造上、来月から給料を2倍にすることはできません。でも、手取りの中身は今日から変えられます。
私の場合は、家計の見直しから始めて、固定費を整理し、学資保険を見直してNISAでの積立に乗り換えました(これはあくまで私の選択で、投資は元本割れのリスクがあります。ご自身の判断で検討してください)。
給料が同じでも、将来への不安は確実に減りました。「不安が減る」は、実質的な収入アップだと私は思っています。
▶ 詳しくは:整備士のお金の悩みを解決する完全ガイド【家計管理から始める収入と暮らしの整え方】
▶ このルートが向いている人:全員(ルート1〜3と並行できます)
まとめ:今日からできる最初の一歩
整備士の給料は、統計だけ見れば「安い」のは半分本当です。でも、それで終わらせるかどうかは選べます。
- ルート1:今の職場で評価を上げる(資格+他者貢献のアピール)
- ルート2:職場を変える(同じ腕でも値段が変わる)
- ルート3:時間単価で考え直す(額面の罠に気づく)
- ルート4:守りで手元に残す(不安を減らすのも収入アップ)
最初の一歩チェックリスト:
- 平均年収・手取り表と自分の現在地を比べた
- 自分の「時間単価」をざっくり計算した
- 4つのルートから、自分に合うものを1つ選んだ
- 選んだルートの記事を読んだ/行動を起こした
20年やってきて思うのは、給料の悩みは「動いた人」から順に軽くなっていくということです。全部やる必要はありません。今日、どれか1つだけ。応援しています。



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