夜、仕事から帰って、布団の中でこの記事を開いていませんか?
「整備士 辞めたい」——その言葉を検索するまでに、たぶん何週間も、何ヶ月も悩んできたはずです。
先にお伝えします。この記事は、あなたに「辞めろ」とも「続けろ」とも言いません。
私は整備士歴20年以上。ディーラーで10年以上働き、一度整備士を辞めて異業種へ転職し——失敗して、整備の世界に戻ってきました。
辞めた経験。辞めて後悔した経験。それでも続けている理由。全部持っている人間として、判断の材料だけをここに置いていきます。
「整備士を辞めたい」は逃げではありません
まず、これだけは言わせてください。
辞めたいと思うことは、逃げではありません。
給料が仕事量に見合わない。夏は灼熱、冬は極寒の工場で体がきつい。人間関係。EV化で先が見えない——整備士の「辞めたい」には、どれも合理的な理由があります。
それに、「これは逃げなんじゃないか」「甘えなんじゃないか」と悩んでいる時点で、あなたは真面目な人です。本当に無責任な人は、そんなことを考えもしません。
ただ、辞めたい気持ちには「種類」があります。それを見分けずに動くと、私のように失敗します。まず、その失敗談からお話しさせてください。
私は一度、整備士を辞めて失敗しました
ディーラーで働いていた頃、ある出来事をきっかけに、私は会社の体制に強い不満を持ちました。
「もうここにはいられない」——そう思い詰めて、退職を決めました。
正直に告白します。今になって思えば、あのときの会社の判断は、組織として当然のものでした。でも、感情の渦中にいた当時の私には、それがまったく見えなかった。
つまり、私の辞めたい理由は「感情」だったんです。整備士そのものが嫌になったわけではないのに、「この会社が嫌だ」が、いつの間にか「整備士を辞めたい」にすり替わっていました。
転職先に選んだのは、異業種の製造の仕事でした。
そして働き始めてすぐ、気づいてしまいます。単調作業が、苦痛で仕方ない。
整備士の仕事は、上司の指示で作業を進めます。でも、その中の工程——何から手を付けて、どう段取りして、どう仕上げるか——は自分で決められる。この「自分で考えて組み立てる裁量」が、私にとって何より大事だったんです。
失って、初めて気づきました。
結局、1年経たずに整備の世界へ戻りました。それが今勤めている民間整備工場です。(このときの転職の詳しい経緯はディーラー整備士を辞めてよかった【現役整備士が振り返る転職のすべて】に書いています)
この失敗から学んだことは、2つあります。
- 感情が主語の退職は、時間が経つと見え方が変わる(あのときの判断が、今はまったく違って見えます)
- 人は「辞めて失って」からしか、自分が仕事に何を求めているか気づけない——でも本当は、辞める前に確かめる方法があります
それが、次の「見分け方」です。
「辞めていいサイン」と「立ち止まるサイン」
私自身の失敗と、20年間で見てきた同僚たちの転職から導いた判断軸です。あくまで一人の整備士の経験則として、参考にしてください。
辞める方向で考えていいサイン
- 体や心を壊しかけている(眠れない・朝起きられない・ミスが急に増えた)
- 昇給・評価の仕組みが会社にそもそもない(頑張りようがない構造)
- 改善を訴えたのに、何も変わらなかった実績がある
- 「整備の仕事そのもの」が嫌いになった
※1つ目に当てはまる方へ。退職の判断より先に、まず休んでください。状態が深刻なら、医療機関への相談を優先してください。判断はそれからで間に合います。
一度立ち止まったほうがいいサイン
- 繁忙期だけ強くそう思う(車検が集中する月など)
- 不満の対象が「特定の1人」だけ
- 「なんとなく嫌」で、理由を言葉にできない
- きっかけが「ある出来事」への感情で、それ以外はおおむね許せている
最後の項目は、まさに当時の私です。出来事への怒りが冷めたとき、辞めた理由ごと消えてしまった。だから失敗しました。
辞める前にやってほしい3つのこと
辞めるにしても、辞めないにしても、先にこの3つをやっておくと後悔がぐっと減ります。
① 辞めたい理由を紙に書き出す
頭の中だけで考えると、感情と事実が混ざります。
- 「給料が安い」→ 事実(いくら?平均と比べてどう?)
- 「上司がムカつく」→ 感情(その上司がいなくなったら、解決します?)
書き出して、「会社が嫌」なのか「整備士が嫌」なのかを分けてください。私はこれをやらずに辞めて、失敗しました。
② お金の防御力を確認する
生活費の何ヶ月分の蓄えがありますか?
これがあるかないかで、転職活動の焦りがまったく違います。焦って決めた転職先は、大体うまくいきません。
▶ 整備士のお金の悩みを解決する完全ガイド【家計管理から始める収入と暮らしの整え方】
③ 自分の市場価値を知る
辞める・辞めないを決める前に、「自分は転職市場でどう評価されるのか」を知っておくと、判断が現実的になります。今の職場が実は恵まれているのか、それとも安く働かされているのか——外の物差しがないと比べようがありません。
▶ 整備士が転職を成功させる完全ガイド【転職先・手順・失敗しない方法を全解説】
「辞めない」も立派な選択肢です
ここまで読んで、「自分はまだ、辞めるサインまでは行っていないかもしれない」と感じた方へ。
辞めずに状況を変える道もあります。不満の中心が給料なら、収入を上げる4つの道筋を別の記事にまとめています。
▶ 整備士の給料は安い?現役20年が教える「安いまま終わらせない」4つの道筋
そして最後に。一度辞めた私が、なぜ今も整備士を続けているのか。
単純に、車が好きだからです。
不具合の原因を追いかけて、見つけて、直して、エンジンがかかった瞬間の達成感。あれは、他の仕事では味わえませんでした。
一度離れたからこそ、確信を持って言えます。この仕事には、それだけの価値がある。
だからこそ——辞めるなら、感情ではなく、判断で辞めてほしい。それが、この記事でいちばん伝えたかったことです。
まとめ:今夜できることは、1つだけでいい
- 辞めたいと思うのは、逃げではない
- ただし「会社が嫌」と「整備士が嫌」は別物(私はここで失敗しました)
- 「辞めていいサイン」と「立ち止まるサイン」に照らしてみる
- 辞める前に:理由の書き出し/お金の確認/市場価値の確認
チェックリスト
- 辞めたい理由を紙に書き出した
- 「会社が嫌」か「整備士が嫌」か、分けてみた
- 生活費の蓄えが何ヶ月分か確認した
- 自分の市場価値を調べてみた
全部やらなくて大丈夫です。今夜は、もう寝てください。
疲れた頭で、人生の判断をしないこと。それが、一度失敗した先輩整備士からの、いちばんのアドバイスです。


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