- ダイヤルの目盛りが多すぎて、どれに合わせればいいか迷う
- テスターを渡されたけど、どこに当てればいいか分からない
- 車やテスターを壊してしまわないか不安
そんな新人整備士の方に向けて書きました。
実は、現場で使うレンジは多くありません。
私がよく使うのは、「電圧」と「抵抗」の2つのレンジです。
この記事では、水温センサーの故障の一部を例に、テスターの使い方を簡単に解説します。
- サーキットテスターで、はじめに覚えるといい2つのレンジ
- テスターを当てるときに、絶対にやってはいけないこと
この記事では、私が現場で使っているカイセのKU-2600で説明します。
カイセは、自動車整備用の計測器を作っているメーカーです。
KU-2600はオートレンジとマニュアルレンジを切り替えられるので、はじめのうちはオートレンジにしておけば、DCVかΩに合わせるだけで測れます。
はじめに覚えるといいのは2つのレンジ|電圧と抵抗
テスターのダイヤルには、たくさんの目盛りがあります。
車の点検ではほかのレンジを使うこともありますが、まず覚えるのは次の2つです。
| レンジ | ダイヤルの表示 | 分かること |
|---|---|---|
| 直流電圧 | DCV または V⎓ | 電気が来ているか |
| 抵抗 | Ω | 配線や部品が切れていないか |
車は「直流」なので、DCVに合わせる
車の電気は、バッテリーから流れる直流です。
電圧を測るときは、DCV(V⎓)に合わせてください。
ACV(V〜)は家庭のコンセントなどの交流用なので、車では使いません。
導通レンジは使わなくていい|抵抗レンジで代わりになる
ダイヤルには、ブザーが鳴る導通レンジもあります。
ただ、私は導通レンジをほとんど使ったことがありません。
抵抗レンジで測れば、切れているかどうかは分かるからです。
- 数値が出る → つながっている
- 無限大(∞) → どこかで切れている
デジタルのテスターでは、無限大は「OL」などと表示されます(表示は機種によって違います)。
【最重要】テスター棒はコネクタの端子に差し込まない|軽く当てるだけ
電圧を測るときも、抵抗を測るときも、守ってほしいことが1つあります。
テスター棒は、コネクタの端子に軽く当てるだけ。端子の中に差し込まないでください。
最近の車の端子は、見て分かるほどとても細くなっています。
そこにテスター棒を差し込むと、端子が広がって変形します。
変形した端子は、コネクタを元に戻しても接触不良を起こします。
つまり、直すつもりで、自分で新しい故障を作ってしまうことになります。
これを二次不具合といいます。
「入るから差し込む」が一番危ない
最近のテスター棒は、先端がさらに細くなっています。
細いぶん、端子の穴にもすっと入ってしまいます。
入るからといって、差し込まないでください。
入ってしまうからこそ、端子を変形させてしまいます。
コネクタは付けたまま、裏側から当てる
コネクタは外さず、配線が出ている裏側からテスター棒を入れて、端子に軽く当てます。
車種によっては、コネクタが防水処理されていて裏側から入らないことがあります。
そのときだけ、コネクタを外して端子側から測ります。
裏側から当てるときは、テスター棒の先に極細のピンを付けると楽です。
私はMACTOOLSのリード線付きの極細ピンを使っていますが、カイセのテスターなら、同じメーカーのテストリードセットが確実です。先端φ0.5mmの極細ピン(赤)と、バッテリーの−端子に挟めるワニグチクリップ(黒)のセットです。
なぜ最初からコネクタを外さないのか
できるだけ、今の状態のまま診断したいからです。
むやみにコネクタを外すと、外した拍子に接触不良が直ってしまうことがあります。
そうなると不具合が出なくなり、原因が分からなくなります。
差し込むと、二次不具合を起こす可能性が大いにあります。
「車を壊してしまわないか不安」という方は、まずこれだけ守ってください。
電圧の測り方の基本|+は測りたい端子、−はアース
電圧の測り方は、どこを測るときも同じです。
- ダイヤルをDCV(V⎓)に合わせる
- 赤い棒(+)を、測りたい端子に軽く当てる
- 黒い棒(−)を、バッテリーの−端子かボディアースに当てる
- 表示された数字が、その端子に来ている電圧
黒い棒は、バッテリーの−端子が確実
バッテリーの−端子に届くなら、そこが確実です。
届かないときは、塗装されていない金属部分やアース線に当てます。
塗装の上から当てても、正しい数字が出ません。
テスター棒の色に決まりはない
赤い棒を+、黒い棒を−として使いますが、色に決まりはありません。
テスターのCOMに差したほうが基準(−)になります。
逆に当てても、表示にマイナスが付くだけで、数字は同じです。
測りたいのは「電圧が来ているかどうか」
- 数字が出る → そこまでは電気が来ている
- 0Vに近い → そこまで電気が来ていない
電気が来ていないなら、もっと手前を調べます。
実践:水温センサーの故障をテスターで見つける
エンジンチェックランプが点灯。診断機で確認したところ、水温系統に不具合が出ていた。
※エンジンコンピューターは、以降ECUと書きます。
水温センサーの中で断線していました。
なお、今回は本当に簡単な点検だけです。
ショートや、配線のどの部分で切れているかといった話は省きます。あくまでテスターの使い方が主題です。
① 電圧を測る|ECUから5Vが出ているか
電圧 DCVECUのコネクタは付けたまま、裏側から当てます。
- 赤い棒 … ECU側の水温センサーの端子
- 黒い棒 … ECU側のアース端子
結果:5V
ここで黒い棒をバッテリーの−端子やボディアースに当ててはいけません。
それではECU側のアースが正常かどうかが分からないからです。
ECUのアース端子に当てることで、電源とアースを同時に確かめられます。
ECUから出ている電源とアースは問題ない。
「12Vじゃないの?」と思うかもしれません。
センサー系の電源は5Vで、一定の電圧(定電圧)です。そう覚えておけば大丈夫です。
ここで1つ補足です。
コネクタが付いた状態で測って、5Vがそのまま出ているときは、断線の疑いがあります。
② 抵抗を測る|ECUからセンサーまでつながっているか
抵抗 ΩECUのコネクタを外して、レンジを抵抗に切り替えます。
外した車両側(ハーネス側)のコネクタで、水温センサーの+と−の端子間を測ります。
結果:無限大(OL)
この測り方だと、1回で配線とセンサーの両方をまとめて確かめられます。
+から配線を通ってセンサーを抜け、−の配線で戻ってくるまでが、ひとつながりになっているからです。
ECUからセンサーまでのどこかで切れている。
ただし、配線が切れているのか、センサー不良なのかは、まだ分かりません。
③ 抵抗を測る|センサー単体が壊れていないか
抵抗 Ωセンサーのコネクタを外して、センサー側の端子の+と−を測ります。
結果:無限大(OL)
センサーの中で切れている = センサー不良
抵抗の規定値は、車種・年式によって違います。必ず整備書で確認してください。
| レンジ | 測る場所 | 結果 | 分かること | |
|---|---|---|---|---|
| ① | 電圧 | ECUのコネクタ(付けたまま) 赤=センサー端子/黒=アース端子 | 5V | ECU側の電源・アースはOK |
| ② | 抵抗 | ECUのコネクタを外し、車両側で+−間 | 無限大 | 配線とセンサーのどこかで切れている |
| ③ | 抵抗 | センサー単体の+− | 無限大 | センサー不良 |
電気の追い方に決まった順番はない|自分に合ったやり方で
今回は、ECUのコネクタから測り始めて、センサーに向かって追っていきました。
ただ、電気の追い方に「これが正解」という決まった順番はありません。
- センサー側から先に測る人もいます
- コネクタに手が届きやすいかどうかでも、測る順番は変わります
自分に合ったやり方や、そのときの状況に合わせて進めてください。

大事なのは、測った結果から「ここまでは正常、ここから先がおかしい」と、範囲を少しずつ絞っていくことです。
最初は時間がかかっても大丈夫。がんばってください。
まとめ
- はじめに覚えるといいのは、電圧(DCV)と抵抗(Ω)の2つのレンジ
- 切れているかどうかは、抵抗レンジで無限大(OL)が出るかで分かる。導通レンジは使わなくていい
- テスター棒は端子に軽く当てるだけ。差し込まない
- コネクタは付けたまま、配線側(裏)から当てる。外すと不具合が消えてしまうことがある
- 電圧は、赤い棒を測りたい端子、黒い棒をアースに当てる
- 電気の追い方に決まった順番はない。範囲を少しずつ絞っていく
テスターは、使えば使うほど手になじんでいきます。
まずは電圧と抵抗の2つから、実際の車で試してみてください。


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