- KDH(1KD)のハイエースが、エンジンチェックランプとDPF警告灯の点灯で入ってきた
- 診断機で強制再生をかけても、温度が上がらない。再生が終わらない
型式が「LDF-」「QDF-」で始まるKDHのハイエースには、DPFを再生するための燃料添加弁にススが溜まって、燃料をうまく噴けなくなる不具合があります。トヨタも保証期間を延長して、無料で修理していた不具合です。
燃料添加弁が原因かどうかを見分ける手がかりになるのが、診断機の2つのデータです。
排気温センサーの値と、燃料添加弁の噴射補正量です。
ただし、バッテリー端子を外すと、噴射補正量は初期値に戻ってしまいます。作業を始める前に、必ずデータを確認してください。
この記事では、入庫してから燃料添加弁の交換を判断するまでの流れを、順番にまとめます。
- この記事の診断が使える車の見分け方(車検証の型式)
- 燃料添加弁の詰まりを判断する2つのデータと、目安の数値
- 車検で入ってきたときにも見ておきたいところ
この記事の対象|車検証の型式が「LDF-」「QDF-」のKDH(1KD)
同じハイエースでも、年式によってDPFの温度を上げる仕組みが違います。仕組みが違えば、見るところも変わります。
まず、車検証の「型式」の頭の3文字を確認してください。
| 型式の頭 | 呼び方 | 生産時期 | DPFの温度を上げる仕組み | この記事 |
|---|---|---|---|---|
| LDF-/QDF- | 3型・4型 | 2010年7月〜 2017年10月 | タービンの後ろに付いた燃料添加弁で燃料を噴く | 使える |
| ADF- | 2型 | 2007年8月〜 2010年7月 | マフラーに付いたシャッター弁 | 使えない |
例えば「LDF-KDH201V」「QDF-KDH206V」なら、この記事の対象です。
型式が「ADF-」で始まる車は、マフラーのシャッター弁で温度を上げる仕組みで、燃料添加弁がありません。この記事の診断の流れは使えないので、注意してください。
また、2017年11月以降のGDH(1GD)はエンジンが違うので、この記事の対象外です。
原因|燃料添加弁にススが付いて噴射できなくなる(トヨタも保証を延長していた)
DPF(触媒)に溜まったPM(スス)を燃やすには、排気の温度を上げる必要があります。
LDF-・QDF-のKDHでは、タービンの後ろに付いた燃料添加弁から排気に燃料を噴き、その燃料を触媒で燃やして温度を上げています。
ところが、この燃料添加弁の周りにススが溜まると、噴ける燃料の量が減ってしまいます。
この不具合は、トヨタも認めています。
「高速走行などの高負荷運転を繰り返すと、燃料添加弁の周辺に炭化物が溜まって噴射量が減り、エンジン警告灯が点灯することがある」
として、保証期間を延長して、無料で修理していました。
| 発表 | 対象の生産時期 | 無料修理の期間 |
|---|---|---|
| 2015年4月 | 2010年7月〜2015年2月 | 新車登録から9年以内 |
| 2019年5月 | 2014年11月〜2017年10月 | 新車登録から7年以内 |
修理の内容は、燃料添加弁と、燃料添加弁の取付け部の交換です。
ただ、2026年の今は、ほとんどの車が無料修理の期間を過ぎています。念のため、車検証の初度登録年月で確認してあげてください。
診断の前に気をつけること|バッテリー端子とフリーズフレームデータ
噴射補正量は、燃料添加弁がどれだけ詰まっているかを見る一番の手がかりです。
補正量が上限に張り付いていても、バッテリー端子を外してしまうと初期値に戻ってしまい、詰まっていたかどうかが分からなくなります。
DPFの警告灯が点いて入ってきたら、ほかの作業より先に、まず診断機をつないでデータを確認してください。
フリーズフレームデータを確認する。できれば保存しておく。
フリーズフレームデータは、故障コードが入ったときの車の状態を記録したものです。故障コードを消去すると、一緒に消えてしまいます。
後から見返せるように、消去する前に確認して、診断機で保存できるなら保存しておくことをおすすめします。
診断の流れ
入庫してから燃料添加弁の交換を判断するまでは、次の5つの順番で見ていきます。
- 入庫時の状態を確認する
- 故障コードを確認する
- フリーズフレームデータを見る
- 排気温センサーの値を見る
- 燃料添加弁の噴射補正量を見る
① 入庫時の状態|エンジンチェックランプ+DPF警告灯
この不具合で入ってくる車は、エンジンチェックランプとDPF警告灯が、両方とも点灯していることが多いです。
② 故障コードを確認する
診断機をつなぐと、DPF関連の故障コードが入っています。
故障コードが入っていたら、すぐに消去せずに、次のフリーズフレームデータを見てください。
③ フリーズフレームデータを見る
ここはざっくりで大丈夫です。全部の項目を細かく見る必要はありません。
見るのは、次の④と⑤の2つの項目です。
④ 排気温センサーの値|正常なら600℃以上、600℃以下なら疑う
フリーズフレームデータで、マフラーに付いている排気温センサーの値を見ます。
正常に再生できているときは、排気の温度は600℃以上まで上がります。
燃料添加弁が詰まっていると燃料を十分に噴けないので、温度が上がりきらず、600℃より低い値になっていることが多いです。
| 排気温センサーの値 | 見立て |
|---|---|
| 600℃以上 | 温度は上がっている |
| 600℃より低い | 燃料添加弁の詰まりを疑う → ⑤へ |
⑤ 燃料添加弁の噴射補正量|上限の1.45なら交換
次に、フリーズフレームデータで燃料添加弁の噴射補正量を見ます。
燃料添加弁が詰まって噴射量が減ると、ECUは足りない分を補おうとして、補正量を上げていきます。
補正量が上限の1.45になっていたら、それ以上は補えない状態です。燃料添加弁の交換を考えます。
このとき、燃料添加弁の取付け部(タービンアウトレットエルボ)も一緒に交換します。ススは燃料添加弁だけでなく、取付け部にも溜まっているからです。トヨタの無料修理でも、燃料添加弁と取付け部の両方を交換していました。
※600℃・1.45は、LDF-・QDF-のKDHで私が見てきた目安です。型式や年式で違う場合もあるので、整備書でもあわせて確認してください。
車検のときにも見てあげたい|上限に近ければ燃費を聞いてみる
故障コードが入っていなくても、車検や点検でLDF-・QDF-のKDHが入ってきたら、データモニターで燃料添加弁の噴射補正量を見てあげるのもおすすめです。
警告灯が点いていなくても、補正量が上限の1.45に近づいているなら、燃料添加弁の周りにススが溜まり始めているかもしれません。
その状態だと、燃料をうまく噴けないぶん、自動再生に時間がかかっている可能性があります。再生が長引けば、そのぶん燃料も多く使います。
補正量が上限に近かったら、お客さんに「最近、燃費が悪くなっていませんか?」と聞いてみてください。
燃費が落ちていると言われたら、警告灯が点く前に、燃料添加弁の状態を説明するきっかけになります。
まとめ
LDF-・QDF-のKDH(1KD)でDPFの再生がうまくいかないときは、燃料添加弁にススが溜まっていないかを疑ってみてください。
- 対象の車:車検証の型式の頭が「LDF-」「QDF-」のKDH。「ADF-」は仕組みが違う
- まずデータ:バッテリー端子を外す前、故障コードを消す前に、フリーズフレームデータを確認・保存
- 排気温センサー:600℃より低ければ、燃料添加弁を疑う
- 噴射補正量:上限の1.45なら、燃料添加弁と取付け部(タービンアウトレットエルボ)の交換を考える
- 車検のときも:補正量が上限に近ければ、お客さんに燃費のことを聞いてみる
よかったらガソリン車の空燃比の診断方法も見てね。



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